選択的夫婦別姓の議論は、1996年から現在に至るまで続いているそうです。
30年近くも進展しないのは何故だと思いますか?
ここでは選択的夫婦別姓と事実婚についてご紹介していきます。
選択的夫婦別姓とは
婚姻時、夫婦同姓にするか姓を変えずにそれぞれの姓を選ぶこと
例 鈴木(男性)・伊藤(女性)が結婚した場合
【現在(夫婦同姓)】
鈴木(夫)または伊藤(妻)どちらかの姓を選択
【選択的夫婦別性】
鈴木(夫)または伊藤(妻)どちらかの姓を選択
鈴木(夫)と伊藤(妻)のまま姓を変えないことを選択
事実婚とは
婚姻届けを出さずに、法律婚の夫婦と同等の共同生活を送り、互いに婚姻の意思を有していること

内縁関係とも呼ばれています。
婚姻届けを提出していないので、姓は変わりません。
選択的夫婦別姓と事実婚の違い
法的に夫婦関係が認められているかいないか
選択的夫婦別性は法的な夫婦関係に当たるので、法的な保護や税制上の優遇措置が受けられますが、事実婚は夫婦関係が認められていないことで、法的な保護や税制上の優遇措置が受けられない場合があります。
比較表
選択的夫婦別性 | 事実婚 | 夫婦同姓 | |
法的な夫婦関係 | あり | なし | あり |
配偶者控除 | あり | なし | あり |
相続 | 相続権あり | 相続権なし | 相続権あり |
医療同意 | 可能 | 難しい | 可能 |
子どもの姓 | 父母と同姓または父か母と同姓 | 母と同姓
(父と同姓も可能) |
父母と同姓 |
社会保険の扶養 | あり | 条件を満たせば可能 | あり |
公的年金制度の給付 | あり | 条件を満たせば可能 | あり |
親権 | 夫婦共同親権 | 単独親権 | 夫婦共同親権 |
父子関係 | 嫡出推定 | 認知 | 嫡出推定 |
※嫡出推定は、婚姻成立後200日経過後または離婚後300日以内に生まれた子は夫の子と推定されます。
※認知は、認知届を提出することで子どもの戸籍に父親の名前が記載され、法律上親子関係が成立します。認知には、任意認知(父親が認知届を提出)と胎児認知(お腹にいる状態の子を認知)、裁判認知(裁判所を通して認知)の3種類があります。
選択的夫婦別性を選んだら、子どもの姓はどうなるの?
婚姻届けを提出する時に、夫婦どちらの姓を子どもが名乗るか決めるという案が有力

子どもの姓がバラバラになると複雑になってしまうので、子どもの姓は統一するという案が有力です。
仮に子どもそれぞれ姓を選べるようにしてしまうと…
【例】長男(父姓)、次男(母姓)、三男(母姓)
と兄弟間で姓が分かれる可能性があります。
選択的夫婦別性が制定されない理由
①選択的夫婦別性を望む方が過半数に満たない
2025年1月のFNNプライムオンラインの世論調査では、旧姓の通称使用拡大が最も多く、選択的夫婦別性を望む方は全体の37.5%になっています。
②強制的親子別姓になる
婚姻時に夫婦別姓を選んだ場合、子どもの意思とは関係なく親が決めた姓を子どもは名乗らなければなりません。その為、どちらかの親と強制的に別姓となります。
また、婚姻時に決めた子どもの姓は、離婚した場合でも原則婚姻時に決めた姓を名乗り続けることになります。子どもの姓を変更する場合は家庭裁判所に申し立てが必要になりますが、正当な理由がなければ認められません。

上記は、産経新聞社が2024年11~12月に実施した小中学生2000人アンケート調査です。
約半数の小中学生が反対という結果になりました。
産経新聞サイトhttps://www.sankei.com/article/
③戸籍制度への影響
選択的夫婦別姓が導入されることによる戸籍の複雑化や、制度変更に対する懸念が指摘されています。
④家族関係証明の複雑化
現在は氏名と住所で家族関係が証明されますが、夫婦間や親子間で姓が違うことにより婚姻関係や家族関係を証明するのが難しくなります。

婚姻関係や家族関係を証明するのに、公的証明書が必要になる可能性があります。
④家族の一体感
夫婦・家族同姓による家族の一体感が、別姓により損なわれると懸念されています。
⑤特例措置への影響
夫婦同姓を前提とした相続税や贈与税の特例措置が受けられない可能性があります。
⑥将来的な戸籍制度の破壊(廃止)につながる
選択的夫婦別姓が導入されると、いずれ夫婦別姓となり戸籍の破壊(廃止)に繋がると懸念されています。

日本の戸籍は優秀で、何世代にも遡って自分のルーツを調べることができます。
また、戸籍謄本一通で家族関係を証明することもできます。
⑦帰化人の出自隠し
選択的夫婦別姓の導入が、帰化した人の出自隠しのためなのではないかと懸念されています。
選択的夫婦別姓導入国は?
ドイツ、オーストラリア、スウェーデン、フィンランド、ロシア、タイなど
アメリカとイギリスは夫婦の姓を規定する法律がないため、自由に選ぶことができます。
原則夫婦別姓を導入しているのが韓国、中国、台湾、シンガポール、ベトナム、ベルギー、フランスなどで、複合姓(夫の姓に妻の旧姓を付加する形)を導入しているのが、イタリアとトルコになります。

日本は現在選択的夫婦同姓です。
同姓・別姓自由に選べるアメリカですが、約8割が夫の姓を選んでいるそうです。
選択的夫婦別姓のメリットとデメリット
メリット
改姓したことによる様々な手続きがない
改姓したくないことが理由で事実婚を選択しているカップルに有益
名前が変わらないことで、結婚や離婚をしても周囲に知られにくい
デメリット
夫婦関係・家族関係の証明が難しくなる
子どもの姓を決める時揉める可能性がある
強制的に親子別姓になる
選択的夫婦別姓による様々な法改正が必要になる
将来的な戸籍制度廃止につながる可能性がある
などがあります。

選択的夫婦別姓はメリットよりデメリットの方が多いのではないかと思っています。
選択できるから別にいいじゃないか?嫌なら同姓を選べばいい!という考えも理解できますが、子どものことや戸籍制度のことを考えると現状の選択的夫婦同姓でいいとKiki’は思っています。
事実婚も法的に認めるなら厳格化する必要はありますが、様々な懸念がある選択的夫婦別姓を推し進めるよりは、事実婚を法的に認めて同姓婚と同等の権利を与えれば、少なくとも戸籍制度は守れるのではないかと思います。